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理事通信 2016年の記事一覧

第11回「飼い主としての補助犬使用者」
 2016年12月29日 掲載

副理事長 山﨑 恵子 (ペット研究会「互」主宰、IAHAIO 理事、白書作成委員 他)

 補助犬の使用者は同時に犬の飼養者であることは言うまでもないが、この点がしばしば見過ごされているのではないかと考えることがある。そのようなことを言うと「補助犬はペットではない」、と叱られてしまいそうであるが、実はペットではないという点が極めて重要なことである。補助犬はペットよりもはるかに重要な任務を背負っているわけであり、当然のことながら一般のペット以上の「メンテナンス」が必要であろう。(ペットを軽視しているわけではないし、彼等にも重要な役割があることは承知している。)最近の愛犬事情を見ると、飼い主たちの知識の幅はめまぐるしいほどに進化している。手作り食やナチュラル・フード、ホメオパシー、アロマ、フラワーレメディ等々を含むホリスティック・ケア、年々進化し続ける様々な犬具、行動学の最新情報に基づいた様々なトレーニング方法、言い始めればきりがないほどに愛犬のケアは今や、一大産業ともなっているのである。そしてその中で飼い主たちには、実にいろいろな選択肢が与えられ始めているのである。しかしそのような情報は、飼い主が求めなければ手に入ることはない。多くの愛犬家はより良いものを求めて常にアンテナを張り巡らせている。

 ここで補助犬の位置づけを考えてみると、どうであろうか?残念ながら、トップを走る一般の飼い主たちと比べれば、まだまだ情報が補助犬の世界では行き渡っていないように感じるのは私だけであろうか。確かに補助犬の育成には必ず障がいのある使用者に関する的確な情報を把握し、それを考慮しながら作業が行われなければならない。一昔前はこの点がないがしろにされ、犬のトレーニングが主軸におかれていたようである。しかし、今や振り子が反対に振り切られているのではなかろうか。大切な作業をしている犬であるからこそ、ペット以上の最新情報に基づいたケアが必要なのである。ドッグスポーツが盛んになってきたことから、今やスポーツドッグ専門の獣医学もあり、後肢などのアンギュレーションの測定等から適性や限界を見ることもできるようである。薬膳による体質改善も動物の世界に広がっている。獣医療の中にも理学療法の専門資格ができ、多くの専門家が育っている。また飼い主が自ら学び、愛犬のボディーバランスの調整に応用できることで世界中に広がりを見せてきた『Tタッチ』も、今や我が国にも定着し、何名もの免許皆伝者が全国に存在する。補助犬には欠かせない服に関しても、素材や構造が犬のストレスを和らげるようなものも開発されており、一般の飼い主たちの中にはこれらを犬に安心をもたらすための「道具」として活用している人々も決して少なくない。

 このようにめまぐるしい発展を遂げている愛犬ケアの世界に関する情報を、もっと補助犬使用者に知っていただく必要がある。むろん使用者の中にはこのような情報に精通している方々もおられることは事実である。しかし一般のペットとは違う、という位置づけを主張するにはペットの飼い主よりも自らのパートナーのメンテナンスに、より一層時間とお金をかけることが当たり前であるということを基本としなければならない。このような点をぜひ今後様々な関係者にお考えいただきたいものである。 (第11回・理事通信)



第10回「人と犬が自然体で共に暮らす社会」
 2016年11月16日 掲載

理事 山口 千津子 ((公社)日本動物福祉協会 特別顧問)

 日本では、最近猫ブームとかで、マスコミも出版界もこぞって猫を取り上げ、猫を使ったコマーシャルがあちらこちらで目に付くようになりました。

 なんでもブームに仕立て上げるのが日本人の特色の様で、今までからもいろいろな犬種の流行が作り上げられ、その毎に急激にその犬種が繁殖されることで無理な繁殖を強いられた雌犬達は、5~6歳ですでにボロボロです。虚弱・遺伝性疾患・先天異常等の子犬も多く生み出されました。ブームに群がる消費者も見かけがその犬種であれば50万円でも100万円でもお金を出します。「共に暮らす命」というよりも「動くおもちゃ」や「ブランドバッグ」のように扱い、極小の犬たちを宝石店のようにガラスケースに入れて展示するペットショップまで出現しています。残念ながら、日本には健全な繁殖のための具体的な法規制はありません。確かに、昔のように番犬として庭で飼育する飼い主よりも、室内飼育する飼い主が増え、家族という認識が広がってはいますが、中には極端に擬人化し、犬としての生理・生態・習性等に配慮するよりも、「かわいがる対象」として愛情をかける人もいます。

 一方、私がRSPCA(英国王立動物虐待防止協会)でインスペクターのトレーニングを受けていた英国では、人と動物の付き合い方は、とても自然体です。デパートのペットグッズ売り場には、日本と同じようにかわいらしい犬の服が売られていますが、実際に公園で飼い主と散歩を楽しんでいる犬たちを見ますと、服を着ている犬たちよりも泥だらけになって飼い主と共に遊んでいる犬たちの方が目に止まります。もちろん、人社会で犬と共に暮らすためのしつけやルール(子供広場は犬禁止や糞の放置禁止、決められたところ以外ではノーリード禁止、等)はありますが、バスには子供料金で乗車できますし、パブで飲んでいる飼い主の足元では犬がくつろいでいます。英国の人々にとって、犬は、「かわいがる対象」というよりは、同じ社会で暮らす「犬」という仲間・家族としてしっかり英国社会に根を下ろし、市民権を得たごく自然にそばにいる存在なのです。

hojoken-blog20160721 犬は人間ではなく、「犬」という種であり、動物福祉の世界基準である「5つの自由」(①飢えと渇きからの自由、②不快からの自由、③痛み・怪我・病気からの自由、④恐怖や抑圧からの自由、⑤正常な行動をする自由)に基づいた犬のニーズを満たし、できる限りストレスのない生活を保障することが、人と犬の自然な付き合いを生むのではないかと思っています。

 その「自然な付き合い」方を、人同士の間でも感じたことがありました。私が信号待ちをしていますと横に目の不自由な方が立たれ、ごく自然に、「一緒に信号を渡っていただけますか」と言われたのです。私も自然に行動しました。

 手助けが必要な人に手を差し伸べることもですが、障害のある方もない方も、手助けが必要な時には遠慮することなく素直にお願いでき、それを自然に受け止めることができる社会。それが、ぬくもりのある、命にやさしい社会であり、私たちが目指すべき社会ではないでしょうか。 (第10回・理事通信)



第9回「障害者の就労支援の現場から」
 2016年10月19日 掲載

理事 釜井利典
社会福祉法人 北摂杉の子会 ジョブジョイントおおさか たかつきブランチ 就労支援員

会議中も聴導犬は大人しく待機=爆睡中

会議中も聴導犬は大人しく待機=爆睡中

誰もが住み良い社会を目指しています。障害のある方もそうでない方も共生できるノーマライゼーションの社会、すなわち障害のあるなしに関わらず誰でもが過ごしやすい社会を目指して、皆が考え取り組まなければなりません。障害のあるお子さんを持つ親御さんは、自分がいなくなったらこの子はどうなるのだろうと、言いようのない不安にさいなまれている方がたくさんいらっしゃいます。障害者にとって就労は自立に向けてとても重要なものです。
就労を望む障害者の基本的なニーズとして多いのが、「企業側に障害を理解してもらい、安心して長期間安定的に働きたい」というものです。そしてこれは私のような就労支援員の願いでもあるのです。ハローワークに行けば障害者向けの求人票は一般求人よりは少ないものの多くあります。条件を高くしなければ就職することは可能です。しかし大事なことは、就職することがゴールではないということです。継続就労すなわちそこで働き続けることが大事なのです。

では長く働き続けるために何が必要になってくるかと言えば、それはご本人の「努力」ではありません。無論努力も必要ですが、雇用する企業や地域、社会が取り組まなければならないことがあります。
平成25年改正障害者雇用促進法では、事業主に対し障害者に対する「合理的配慮」の提供義務が規定され、平成27年3月には、合理的配慮指針が策定されました。
特定の個性や心身の症状を持っている人が、適切な配慮を受けることができれば、それぞれが持てる力をより活かし、日常生活はもとより社会生活を営むことができます。ただしそれは画一的なものではなく、一人ひとり障害の状態や職場の状況に応じて提供されるものであり、個々に調整が必要になります。ですので、合理的配慮を否定したり拒否することは、「差別」ともいえます。

合理的配慮を受けることができる対象者は、障害者手帳の有無には関係ありません。
「障害者差別解消法」には、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害(以下「障害」を総称する。)がある者であって、障害および社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。(同法 第一章 第二条)」と規定されています。すなわち個人と社会の相互作用によって「障害」は発生するので、社会制度や環境までもが工夫の対象となります。

合理的配慮のポイントは、その人その人ひとり一人に適した配慮です。但し過剰な配慮は、その方の持てる力を発揮する場や機会を失わせることになるため合理的とは言えません。必要かつ適切な配慮が必要となります。そのためには、ご本人がどのような場面で何に困っているのか、どのような配慮を必要としているのか把握することが必要です。
障害もいろいろあり、視覚や聴覚の障害、肢体不自由、知的や精神障害、発達障害、内部障害や難病による障害なども、障害特性や各個人のニーズもそれぞれ違います。こうすれば良いと画一的な物ではないのですが、少し具体例をご紹介します。

就労においては、障害特性によって通勤時間を考慮する必要があります。通勤ラッシュを避けるために出退勤の時間調整をしたり、休暇も通院に配慮することも必要です。また職場では動線を考慮し座席の配置を考慮することや通路には物を置かない、ケーブルはすべて天井から下すなどの物理的環境の整備も必要でしょう。またご本人の習熟度に応じた仕事量や難易度の調整、図や写真などを活用した業務マニュアルや手順書の整備、その日の業務内容や目標、スケジュールなどを明確にすることも合理的配慮になります。
ただし合理的配慮は、障害者を既に雇用している企業やこれから新たに障害者を雇用しようと考えている企業に取っては、ハードルの高いものに感じるでしょう。何だか難しそうだなぁと採用を躊躇される可能性があります。

そこで重要な役割を担うのが、職場適応援助者(ジョブコーチ)です。障害者が職場に適応できるよう、障害者自身に対する支援に加え、事業主や職場の従業員に対しても、障害者の職場適応に必要な助言を行い、必要に応じて職務の再設計や職場環境の改善を提案し定着に向けて支援してゆきます。
ちなみにジョブコーチは、地域障害者職業センターや障害者の就労支援を行う社会福祉法人、あるいは障害者を雇用する企業にもおられます。
それぞれ雇用障害者数は年々増加していますが、まだまだ少ないのが現状です。社会に対し障害に関する知識の普及や継続的な支援を行うことが、ノーマライゼーション実現のために重要なことと思います。障害のあるなしに関わらず誰もが過ごしやすい社会を目指して、私も就労支援員としてジョブコーチとして障害者に寄り添い歩んでゆこうと思っています。 (第9回・理事通信)

◆平成27年の障害者雇用状況(厚生労働省)
民間企業に雇用されている
障害者の数
453,133.5人
身体障害者 320,752.5人
知的障害者 97,744.0人
精神障害者 34,637.0人
◆民間企業の雇用状況
法定雇用率 2.0%
実雇用率 1.88%
法定雇用率
達成企業割合
47.2%

 



第8回「リハビリテーション関連職種の理解・協力を求む!!」
 2016年9月23日 掲載

理事 野口 裕美
四條畷学園大学 リハビリテーション学部 作業療法学専攻 講師 理学療法士/作業療法士

sd_touch 今回、理事通信の原稿依頼のお話を頂き、原稿の依頼があってから投稿まで何をお伝えしようかな・・・という点も含め、少々、色々な事を考えさせて頂きました。そこでは私が補助犬事業に関わってからを振り帰る良い機会となりましたので、私見も含めて(私見が大半で)、私が介助犬の存在を知った15年前の状況と現状、抱える課題に関して、医療従事者として、当団体の役員として、取り組むべき課題について書かせて頂く事に致しました。

 あっという間の15年でしたが、冷静に考えると決して短い時間ではありません。それでは現状、補助犬を取り巻く社会の環境がどれだけ変化したのだろうか?そして自分自身がこの事業に対してどれだけ貢献することができ、社会に対して有益な情報をどれだけ提供することができたのだろか?その様な問いかけは尽きることがありません。

 私は、15年前に日本全薬工業㈱(ゼノアック)が助成する理学療法士、作業療法士を対象にした「介助犬トレーナー研修生」に応募し、参加をしたのが介助犬に関する最初の大きな関わりでした。その時の報告はゼノアックのHPに掲載されていますので、是非、ご参考にして下さい。

※ゼノアック・スカラーシップ、スカラーによる研修生の報告
 http://www.zenoaq.jp/csr/support2.html

 研修後には、「理学療法士として、客観的なデータに基づく、介助犬の身体介助機能面に関する研究を積み重ね、介助犬による身体介助効果について明らかにしてゆきたい」という掲げた目標に邁進して参りました。
 その後、大学院において作業療法士の恩師より多大なる影響を受け、機能面における研究のみならず、介助犬と生活することによってもたらされるライフスタイルや自己効力感の変化に興味を持ち、作業療法を学ぶ機会を得て、現在は作業療法学的な分野で研究活動を進めております。
 一人でも多くの理学療法士、作業療法士に介助犬の存在を知ってもらい、一般的な装具と同様に介助犬に関しても知識を蓄えて頂きたい思いで、個人的には地道に、啓発活動、研究活動、様々な活動を続けて参りました。
 しかし、ふと立ち止まってみると医療従事者の介助犬に対する認識がまだまだ低く、そして、受け入れに関しても医療機関で同伴拒否に会うケースが未だ多いのが現状です。そして、特にこの分野に関して興味を持って、共に関与する医療従事者を育成できていない現状に気が付かされます。
 今後、自立の手段として介助犬との生活が適応となる障碍者に対して、日々の臨床現場の中で情報提供し、一人でも多くの障碍者が介助犬の効果を最大限に引き出しながら、充実した生活が送れるように様な環境を作りだすためには、引き続き、そして、益々、理学療法士、作業療法士に対して介助犬の存在、効果について、情報提供する必要性を感じております。
 そして、特に、次世代に向けて、この補助犬事業の一部を支えてもらうためにも、若い世代のセラピストが補助犬に興味を持ち、効果について共に考えてもらえるような体制を整えていくことが必須であると感じております。この体制構築が私にとっては、当面、一番の課題であると考えています。
 当センターとしてもリハビリテーション専門職を対象に介助犬の情報提供するセミナーなどを計画するなど、具体的に事業を展開して参りたいと思います。

 是非、少しでもご興味、関心を持たれたリハビリテーション専門職の方々、当センターまで、ご連絡下さい。リハビリテーション専門職としてできることを色々な側面から一緒に検討していきませんか。ご連絡をお待ちしております。 (第8回・理事通信)



第7回「建設的対話こそ共生社会を開くカギ ~障害者差別解消法施行を受けて~」
 2016年7月19日 掲載

専務理事 兼 事務局長 橋爪 智子

 2002年に身体障害者補助犬法が施行され、15年目の2016年4月、障害者差別解消法が施行されました。
 障害者白書によると、日本には、身体障害者393.7万人、知的障害者74.1万人、精神障害者320.1万人、合計787.9万人。総人口1億2千万人の約6%、およそ16~17人に1人が何らかの障害がある方、ということになります。

 世界的に見ると「One In Ten」という言葉が在ります。10人に1人と言われています。そんな社会に私達は住んでいるのですが、残念ながら、日本という国は、物理的なバリア「ハード」面ではとても進んでおり、評価されていますが、心のバリア「ソフト」面は、まだまだなのが現状です。個人的には、日本特有の『奥ゆかしさ』や、『隠匿の美』的な感覚が、ブレーキをかけてきたのではないかな~と感じています。

補助犬3種

補助犬3種

 そんな中、ようやくわが国も障害者権利条約に批准し、障害者差別解消法を施行することで、インクルーシブ社会先進国のスタート地点に立てました。いよいよ、これからが本番です。2020年東京オリンピックパラリンピック開催は、障害者理解を深める、千載一遇のチャンスだと感じていますので、社会全体でこの機運を盛り上げて行ければ!と思っています。そのためにも、私達 補助犬関係者は、『補助犬』の普及啓発を切口として、障害のある方々の事を社会に対して広く発信し、真のインクルーシブ社会実現のため、更に力を合わせていかなければならないと感じています。その取り組みをするためにも、障害者差別解消法の正しい理解が必要です。
 しっかりと学び、正しい啓発に繋げたいと思っています。

障害者差別解消法と「基本方針」のポイント♪

1.みんな違ってみんないい!
 法の目的は「障害を理由とする差別の解消を推進することによって、(中略)全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資すること」(1条)とされています。 この、『相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会』これこそまさに、補助犬法の精神と同じだと感じます♪

2.障害を理由とする不当な差別的取り扱いの禁止
 行政機関や民間事業者(事業者、病院、学校、PTA、町内会etc…)に対し、「障害を理由として障害者でない者と不当な差別取扱いをすること」を禁止(7条1項、8条1項)
 つまり、どんな場面でも、ということがわかると思います。ちなみに、『補助犬の同伴拒否』はこの「障害を理由とする不当な差別的取り扱い」に当たります。

3.合理的配慮の提供
 行政機関や民間事業者は、障害者からの申出があった場合、過重な負担とならない限り、当該障害者に対し合理的配慮を行わなければならないと定められた(7条2項、8条2項)

 「基本方針」には合理的配慮の例として次のようなものがあげられています。

  • 車椅子利用者のために段差に携帯スロープを渡す、高い所に陳列された商品を取って渡すなどの物理的環境への配慮
  • 筆談、読み上げ、手話などによるコミュニケーション、分かり易い表現を使って説明をするなどの意思疎通への配慮
  • 障害の特性に応じた休憩時間の調整などのルール・慣行の柔軟な変更

となっています。

 残念ながら、この合理的配慮には、「わかりやすい正解」はありません。なぜなら、1人1人が必要としている配慮は、それぞれ違うからです。ですので、最も大切なことは、「何かお手伝いしましょうか?」の一言がかけられるかどうか?なのです。

 ぜひ、皆さん、障害のある方々に出会えたら、そして、その方が困っている様子だったら、是非「何かお手伝いしましょうか?」の一言を♪そして、提示されたサポートを、無理の無い範囲でお願い致します。決して「特にお願いしたいことはありません」と言われても、ガッカリしないで下さいね♪必ず、また、チャンスはありますので♪ (第17回・理事通信)



第6回「身体障害者補助犬啓発の課題~特効薬はあるのだろうか・・・?」
 2016年6月22日 掲載

理事 吉田 文(大阪保健医療大学 作業療法学専攻 教授 (作業療法士))

 2015年度にサービスグラントからのご紹介でSMFGプロボノプロジェクトの協力を得て、補助犬受け入れ実態の把握および阻害要因の調査を行った。今回の結果を2005年に行った調査結果と比較してみると、調査人数はほぼ同じ、各補助犬の実働頭数は微増しているが、残念ながら補助犬の受け入れは進んでいないという結果である(詳細は当会・ウェブサイトからダウンロードできる資料をご参照願いたい)。

表1.身体障害者補助犬の実働頭数           
 ※盲導犬:社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会調べ
 ※介助犬・聴導犬:厚生労働省調べ          
調査年 盲導犬 介助犬 聴導犬
2005年03月末 957頭 28頭 10頭
2010年03月末 1070頭 46頭 19頭
2015年03月末 984頭 76頭 61頭



 身体障害者補助犬法ができて14年。当会も今後の啓発活動をどのように展開していけばよいのか、再検討する必要がある。この現状を打開する特効薬はあるのだろうか?

講義後

講義後

 先日、当会理事の木村に私が勤務する大学での講義をお願いした。テーマは「介助犬と作業療法」である。介助犬使用者である木村は現在の介助犬デイジーで3頭目。介助犬使用者の立場から作業療法士になるための勉強をしている学生に向け、自身の障害について、介助犬との生活の実際と有効性、補助犬受け入れの現状等についての講義を行った。リハビリテーション専門職を目指す学生たちに補助犬の講義をすることは、学生にとってはリハビリテーションツールの一つとしての補助犬を学習し、障害のある方の自立と社会参加を支援する知識・技術の幅を広げるという側面がある。もう一方で、学生たちが将来勤務する医療施設での補助犬の受け入れを促進するための啓発活動として捉えることができる。

 直接補助犬使用者の話を聞き、補助犬を目にすることで解ける誤解はたくさんある。世の中には当然犬が苦手という方がたくさんおられる。学生の中にも苦手である・アレルギーがあるという人が数名いた。難しいのは、苦手な学生への強制にならないようにいかに学習の場を共にするかということである。あくまでも学習してほしいのは客観的な補助犬の知識であり、その知識は障害のある方の権利の保障につながるということを学生が理解することである。主観的な気持ちは学生自身が決めることであり、変化を期待するところではなかった。苦手な場合やアレルギーがある場合、どのように対処したら良いか学生全員に説明し理解することを求めた。結果としては何事もなく講義が終了した。それどころか、苦手だと言っていた学生の一人は「犬の印象が変わった、デイジーなら大丈夫」と言って、犬をなでられるほどになった。

 木村からの介助犬育成にはリハビリテーション専門職の協力が必要なこと、将来の就職先で補助犬の受け入れに積極的に協力してほしいこと、そのためにこの授業を役立ててほしいというメッセージと介助犬デイジーの実際の様子が学生の気持ちに影響を与えたのだろうと考える。この変化は補助犬使用者の利益になるだけでなく、犬をなでられるようになった学生の利益にもつながる。きっとこの学生は今後街で補助犬使用者に出会ったときに不快な感情や活動の制限を感じることなく補助犬使用者と場を共にできるはずである。もともと障害のある方への支援を仕事にしたいと志している学生なので全ての犬が苦手な方に当てはまるとは言えないが、今後の啓発活動のヒントがここにあると感じた(この講義については毎日新聞のウェブサイト「支局長からの手紙」に紹介されている)。

 犬が苦手な方や興味がない方にも情報を届ける工夫をすること、将来の社会を構成する若い世代にも積極的に情報提供すること、できるだけ多くの方に補助犬使用者と補助犬との活動を直接見聞きしてもらうこと、そして犬の問題ではなく障害のある方の社会参加の権利の問題であるという理解を求める活動を地道に、他団体・他領域の方々と協力して活動範囲を広げながら続けていくことが必要であると考える。
 身体障害者補助犬法ができてもう14年と思っていたが、補助犬が当たり前の社会になるにはまだ14年なのかもしれない。当会の存在意義がなくなる日が来るまで粘り強く活動を続けられるように計画していきたい。 (第6回・理事通信)



第5回「熊本地震によせて・・・動物行動学の観点から」
 2016年5月19日 掲載

理事 入交 眞巳
日本獣医生命科学大学 獣医学部獣医学科 臨床獣医学部門 治療学分野Ⅰ 講師(米国獣医行動学Ph.D)

 熊本地震があった日から1か月以上がたちました。被害にあわれた方に改めてお見舞い申し上げます。

 地震の後遺症で困っているワンちゃんや猫ちゃんに何ができるか、今からワンちゃんや猫ちゃんに何ができるかのお話です。

<地震の災害警報や携帯の警報を聞くと怖がる子に対して>

レオンベッド 警報が鳴ってから必ず揺れが来るような環境にいると動物も警報が鳴ると揺れが来るのではないか、と学習し、警報音で不安が増すような事態になります。警報音は怖いものではない、と教えるために警報が鳴ったらワンちゃん、ネコちゃんに大好きなおやつやフードをあげるようにしてみてください。おやつの大きさは小指の爪の半分くらいの大きさで十分です。小さいおやつをいくつもあげて気持ちを落ち着かせてあげましょう。
 もしも、普通は食べるのに警報の後はおやつやフードを食べない場合、これは不安が強すぎて食べられない、という意味です。無理に口に入れようとすると人の手がかまれるかもしれませんので、無理強いはせず、リードが付いていたら気分転換に少し一緒に歩いたり、他の部屋に逃げさせてあげたりしてもいいでしょう。少し落ちついたらおやつを上げたらよいと思います。

<特定の場所や状況に対して怖がる場合>

 本震を経験したのが寝室だった猫さんがその寝室に入らなくなって困っているご相談を受けました。特定の場所に対して怖がっている場合、地震の後にその経験から学んでしまった「寝室にいると地震が来て怖い」という考えを「寝室にいても大丈夫」という考え方に変更させるために「拮抗条件づけ」という学習をさせます。
 夜だけ寝室に入って犬や猫を招くのではなく、日中も時間があるときに寝室に行ってあえてそこで大好物の食べ物を与えたり、寝室であえて思いっきり遊んであげましょう。また可能であれば、ご飯もその部屋でしばらくあげても良いかもしれません。
 どうしても上のようなテクニックがうまくいかない場合は、不安を下げるサプリメントやお薬がありますので獣医さんにご相談ください。

<これからしたいこと>

 徐々に落ち着いてきましたら、万が一に備えていきましょう。
 災害時はどうしても色々なことが起きますので、どんなに気を付けていてもワンちゃんや猫ちゃんがはぐれてどこかに行ってしまったり、パニックしていきなり逃げ出したりします。落ちついてからそっと物陰から出てきて近所の方が保護するようなことになるかもしれません。災害時に捕獲された動物が誰の子か速やかにわかるようにワンちゃん猫ちゃんにはマイクロチップを装着し、登録をしておきましょう。また、狂犬病済票を首輪につけておくとこれも所有者明示の意味があるものになりますので、つけておける子はつけておくようにしましょう。また首輪などに消えないマジックなどでご家族の名前と電話番号を入れると、だれでもすぐに誰の子かわかるのでお家に帰りやすくなるかもしれません。災害時に迷子にさせないようにしっかり予防しておきましょう。

くるみキャリー また、避難所ではケージに入れられることが多くなります。ケージに入れないと避難所自体にも入れなかったりしますので、何もないときからは「ハウス」と言うとケージやキャリーに自らいけるような練習をしておきましょう。方法は簡単で、「ハウス」と言っては好物の食べ物をケージかキャリーにほおり込むだけです。大好きなものを食べるために喜んでハウスやキャリーに自ら入れるようになります。繰り返すうちに「ハウス」と言うだけでハウスに入ってワクワクとおやつを待つまでになるでしょう。こうなるとハウスに入ること自体にストレスは感じなくなります。


 そろそろ動物たちも落ち着きを取り戻しながらも色々な他の問題も出てきている可能性があります。体調を崩してしまうのは動物も同じです。
 どんなことでも何か心配なことがありましたら是非近隣の獣医さんにご相談ください。 (第5回・理事通信)

<熊本県獣医師会の被災動物支援専用の電話窓口>
 http://www.pref.kumamoto.jp/kiji_15527.html



第4回「介助犬と身体障害者補助犬法」
 2016年4月16日 掲載

理事 木村佳友(日本介助犬使用者の会・会長、関西学院大学・非常勤講師)

レストランで

レストランで

 介助犬との生活は、今年で20年になります。初代のシンシア、2頭目のエルモを経て、現在は3頭目のデイジーと生活しています。
 私は27歳の時、通勤途上の交通事故で頸髄を損傷し車いすの生活になりました。結婚して1年余りの頃です。人生を諦めかけた時期もありましたが、リハビリ訓練を経て在宅勤務で職場復帰も果たしました。しかし、妻との二人暮らしで妻もフルタイムで勤務しており、日中は一人になるため、落したものが拾えず仕事が中断する、車いすから転倒しても助けを呼べないなど、問題がありました。ちょうどその頃、日本で育成が始まったばかりの介助犬の記事をきっかけに、介助犬との生活を始めることになりました。

 前年(1995年)に国産第1号の介助犬が誕生したばかりで、シンシアは日本で3頭目の介助犬でした。盲導犬と異なり、数頭しかいない介助犬は存在すら知られておらずペット扱いされ、同伴拒否の連続で、交渉しても受け入れてくれる施設はほんの一握りで、交通機関も利用できない状況でした。地道に交渉を続けることで、理解を示してくれる施設もあらわれました。また、事前の手続きや乗車試験が必要でしたが、一部の交通機関にも乗車できるようになりました。
 しかし、このような状況では、個別の交渉をいつまでも続けなければならず、使用者にとって、物理的にも精神的にも大きな負担でした。家では、生活をサポートしてくれる大切なパートナーですが、車いすで外出するだけでも大変なのに、介助犬を同伴することで、さらに外出のバリアが増えてしまいました。このままでは、今後の使用者も私と同じ苦労をすることになり、障がい者が「介助犬との生活」を諦めてしまいます。
 講演やマスコミ取材などを通じて、介助犬の受け入れを求める活動を続けていましたが、1999年には、シンシアと一緒に国会を訪れ、勉強会を開き介助犬の公的認知を訴えました。数か月後、勉強会に参加した国会議員が中心となって、「介助犬を推進する議員の会(注1)」が発足、国会においても介助犬の公的認知に向けた検討が始まります。国内外の現状、海外の法整備などを調査しながら、介助犬法の成立を目指しました。
 しかし、歴史ある盲導犬ですら施設への同伴を認める法律はなく、同伴拒否が絶えない状況で、盲導犬と、さらに聴導犬も加えた法案を作成することになり、盲導犬・介助犬・聴導犬の3種を総称する「身体障害者補助犬(補助犬)」を新たに定義し、法案が議員立法で国会へ提出されました。
 そして、2002年05月に、衆参の厚生労働委員会・本会議のすべてで、全会一致で可決され、補助犬使用者にとって悲願の法律「身体障害者補助犬法(補助犬法)」が成立したのです。
 公共施設、公共交通機関だけでなく、レストランやホテル、病院などの民間の施設においても、補助犬の受入が義務付けられました。受入を義務化するにあたっては、補助犬および使用者の能力を審査する認定制度も設けられました。さらに、訓練事業者は、新たに設けられた訓練基準・認定基準に沿った育成が義務付けられ、使用者にも補助犬の健康・行動を適正に管理することが義務付けられました。
 補助犬法の成立・施行の際には、テレビ・新聞でも大きく報道され、補助犬の認知度も上がり、同伴拒否も減りました。時間の経過とともに、補助犬法が広く認知され同伴拒否は少なくなっていくものと思っていましたが、法成立から14年が経った今も、同伴拒否は無くなっていません。
 2005年と2015年に実施した同伴拒否に関するアンケートでは、「同伴拒否を経験した使用者」の割合が、59.1%から66.0%へ増加しています。これと呼応するように、関西福祉科学大学の松中久美子准教授らの「身体障害者補助犬法の認知度調査(表1)」でも、「補助犬法の名称も内容も知らない」という人の割合が、2004年の55.3%から2011年の64.0%へ増加し、認知度が下がっています。
 最近では、同伴拒否などの事件が発生した時に、テレビや新聞で広く報道されることがありますが、一般的に補助犬に関する報道が少なくなったことも大きな原因だと思われます。さらには、企業内での補助犬法の周知徹底が、補助犬法成立時に比べるとおろそかになっていることも影響していると思います。
 「身体障害者補助犬を推進する議員の会」主催のシンポジウムを始めとする啓発イベントや講演会の実施、補助犬の啓発リーフレットやDVDの作成・配布はずっと継続しており、一部の教科書では補助犬法が紹介されるようになったにもかかわらず、認知度が下がっているのは非常に残念です。
 4月1日には、障害者差別解消法が施行されましたが、補助犬法とともに、国民に周知理解が広がり、障がい者や補助犬が自由に社会参加できることを期待しています。 (第4回・理事通信)

注1)「介助犬を推進する議員の会」の名称は、身体障害者補助犬法案が提出される際に、「身体障害者補助犬を推進する議員の会」へ変更された。

 

表1.身体障害者補助犬法の認知度調査
調査年
サンプル数
名称も内容も
知っている
名称のみ
知っている
名称も内容も
知らない
2004年
n=800人
6.1% 38.6% 55.3%
2011年
n=3000人
7% 29% 64%

※引用文献
・松中久美子・甲田菜穂子 2008 一般成人の身体障害者補助犬法の周知と補助犬の受け入れ-補助犬関連知識の効果- 社会福祉学, 49, 53-59.
・松中久美子・甲田菜穂子 2012 一般成人の身体障害者補助犬法の周知と補助犬の受け入れ-補助犬法改正後の共存意識について- 日本心理学会 第76回大会発表論文集



第3回「私感:差別と自立生活と社会参加、そして、権利とユニバーサルデザイン社会」
 2016年3月16日 掲載

副理事長 佐鹿 博信 (横浜市立大学医学部 リハビリテーション科 客員教授)

私は1976年にリハビリテーション科医師(2003年にリハ科専門医登録)になりました。約40年間で障がい者への差別、社会参加、権利(人権)をめぐってゆっくりだが大きな変化がありました。

1980年代の初頭は、リハ医学では「医学モデル」が主流であり、日常生活動作の自立や職業的自立を重視する自立観でした。青い芝の会(脳性麻痺者)による鋭い「生存権要求」「障がい者への反差別」などの闘争がありました。1979年の全員就学(養護学校義務化)や1981年の国際障害者年(完全参加と平等)など、障がい児教育や障がい者への社会的施策が大きく進みました。

1960年代の初めにカリフォルニア大学バークレー校から始まった自立生活運動(MIL)は、1972年に自立生活センター(CIL)へと発展し、ILの自立生活モデルは医学モデルを凌駕していきました。自立とは自己決定権の行使(自分の生活を自分で選び自分で決める)であるというMILは、1970年代後半に日本に紹介され、1991年には全国自立生活センター協議会(JIL)が発足しました。2015年では全国125団体がJILに加盟しています。

CILでは、障がい者自身が自らの自立生活のためのサービスを選択し運営(自己決定)する権利を有し、その計画の立案から運営までの過程に専門家と対等に参画する行為を自立として捉えてCILの運営の中核を障がい者が担っています(当事者参加)。自立体験をもつ障がい者は自立生活の実践的専門家であり、自立を求める障がい者の自立生活を側面から支援するピア・カウンセラーです(専門家と対等)。障がい者の自立(社会参加)を妨げるような障壁(差別的な社会構造や環境)を改革するために、他の社会的に阻害された人々(マイノリティー)と連携します。

国連は「障害者の権利に関する条約」を2006年12月に採択し、2007年に日本は署名しました。これを受けた「障害者差別解消法」はようやく2013年5月に成立し、2015年12月に同条約を批准し、2016年4月に同法は施行されます。長年、差別により苦しんできた障がい者はようやく完全参加と平等への法的基盤を獲得したことになります。

さて、補助犬使用者には、補助犬同伴拒否という差別の現状があり、自立生活、社会参加、権利などが十分に満たされているのでしょうか。

まず、同伴拒否の前に、補助犬を希望する障がい者はこれにアクセスする権利を阻害されています。介助犬と聴導犬の訓練事業者と認定法人は、北海道・東北・北陸・中国地方、および東京都と沖縄県には存在していません。盲導犬では全国で11法人に過ぎません。合同訓練は介助犬40日以上。盲導犬10日以上、盲導犬(共同訓練)4週以上を課せられています。例えば、青森県に居住する聴覚障がい者は、聴導犬のために関東や長野県などに出向かなければなりません。これでは「聴導犬をあきらめなさい」と言われていると同等です。多くの障がい者にとって、このようなアクセス権への侵害すら解消されないで障がい者補助犬法施行後14年が経過してしまいました。所轄官庁(厚労省と国家公安委員会)のみならず訓練事業者と補助犬使用者は猛烈に反省しなければなりません。アクセス権の解消へ向けた強力な施策を要求し、訓練事業者と補助犬使用者は連携して運動を進める事が必要です。

「当事者参加」ですが、補助犬の認定審査会や訓練事業者などに補助犬当事者が参加していません。つまり、専門家と対等の実践的専門家(ピア・カウンセラー)としてこれらの機関から認知されていないと言えます。そうすると、訓練事業者を介したピアカウンセリングも有効に機能していない可能性があり、補助犬希望者は「公正」なピアカウンセラーへのアクセスを阻害されていると推察されます。さらに、当事者参加によりはじめて良質な補助犬の育成、公正な認定、および啓発普及が実現していくと思います。加えて、「人に迷惑を及ぼさないこと」などの拒否や社会的障壁に直結する酷い表現も改善されると思います。

訓練事業者と認定施設が同じという極めて「非公正」な状態が解消されていません。医学教育分野では、医学教育の質向上と「公正」な臨床実習資格認定を目的として、2005年から医療系大学間共用試験実施評価機構が客観的臨床能力試験実施されています。補助犬の認定審査では、訓練事業所と認定施設を分離し、認定審査を実施する「認定審査機構」による客観的で公正な認定が行われることを期待します。

最後に、補助犬の所轄官庁は統合されるべきです、盲導犬は道路交通法規定されています。同法の目的は「交通安全に資すること」であり、視覚障がい者の社会参加や権利擁護に関する事柄はこの法の目的ではありません。したがって、盲導犬の所轄官庁は厚労省とするべきです。

このように考えてくると、補助犬に関する差別、社会参加、権利などが曖昧なままであり、このことが補助犬の普及を妨げているのかもしれません。このような現状であっても、補助犬使用にかかわらず、障がい者の社会参加を促し、支援し、受け容れる社会を創造していくことが重要です。つまり、ユニバーサルデザイン社会(UD社会)です。UD社会へ向けた運動の主体者は障がいの当事者であるべきです。補助犬使用の障がい者の連携が進み、補助犬訓練事業者の協同体(協議会)が形成され、補助犬情報センターがそれらの個人・団体・組織への連絡機能を持つことは重要です。 (第3回・理事通信)



第2回「IAHAIO(人と動物の関係に関する国際団体)白書」
 2016年2月16日 掲載

副理事長 山﨑 恵子 (ペット研究会「互」主宰、IAHAIO 理事、白書作成委員 他)

補助犬3種

補助犬3種

 IAHAIOは1990年に設立された「人と動物の関係に関する国際団体」です。3年に一度国際学会を開催し、動物介在療法、教育現場の動物、補助動物、社会問題等々に関する専門的発表の場を提供してきました。その中で最近問題とされ始めたのは、人間の医療・福祉・教育など様々な目的に活用されている『動物の福祉』です。人間の生活の質の向上に役立ってもらうのであればまずは動物自体の福祉が守られなければならない、という基本的な考えをより多くの関係者に持ってもらうという目的で活動動物の福祉基準を明確にするための専門委員会を設置し1年以上にわたり話し合いを繰り返し、最終的にはその結果を白書という形にまとめました。

 補助犬に関しては一部言及されている個所もありますが、基本は訪問活動などに参加したり、教育の現場で使用されたりする動物を対象に書かれた文章です。しかし同団体においては、いずれは補助犬に関する文章も作成しようという意欲はあり、将来的にはそのようなものも公表されるでしょう。動物の福祉は決して無視をするべき事柄ではありませんが、今回いわゆる動物愛護団体ではないところからこのような白書が出たということには大きな意味があると思います。今や動物を活用する人々対動物愛護団体という構図は時代遅れとなりつつあります。動物で何かをしようとする当事者間で福祉が語られる時代の到来ともいえましょう。我が国の団体もその流れに遅れをとらぬよう精進していかなければなりません。 (第2回・理事通信)

参照)IAHAIOウェブサイト→ International Association of Human-Animal Interaction Organizations

 



第1回「動物福祉の現状」
 2016年1月4日 掲載

理事 山口 千津子 ((公社)日本動物福祉協会 特別顧問)

補助犬3種

補助犬3種

平成24年に「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)が改正され、わが国でも動物の健康や安全、適正な取り扱い等飼い主責任の強化や、動物の虐待・遺棄の防止、罰則の強化等、「動物福祉」と「人と動物の共生」のさらなる推進が謳われました。ペット動物であれ、補助犬等の使役動物であれ、すべての飼い主(所有者・占有者)はこの法律を遵守しなければなりません。

この法律名にもありますように、日本では「動物」という言葉の後には「愛護」と続くことが多いのですが、「愛して護る」その愛し方は百人百様ですので、「かわいい」とか「かわいそう」という感情の下、「気まぐれな愛」や「間違った愛し方」の中で動物が苦しんでいることもあります。

一方、「動物福祉」はそのような感情に左右されるものではなく、その動物が、今、何を必要としているかを見極め、その必要としているもの「ニーズ」(肉体的・精神的・環境的・行動的・社会的ニーズ)を満たすよう行動することであり、福祉が確保された状態とは、一言でいえば「精神的にも肉体的にも健康であり、環境と調和・適応していてハッピーである」状態を言います。その基本に据えられているのが、「動物福祉」の国際的概念として認められている「5つの自由」(1.飢えと渇きからの自由、2.不快からの自由、3.肉体的苦痛・怪我・病気からの自由、4.恐怖や抑圧からの自由、5.正常な行動をする自由)です。改正動物愛護管理法にも言葉を変えて「5つの自由」の一部は法文に書き込まれています。この「動物福祉」は犬猫等の家庭動物のみならず、人の飼育下にあるすべての動物に当てはめられますので、補助犬も含め、人が飼育・利用しているすべての動物に対して、生まれてから死ぬまでその飼育方法・環境や輸送、扱い等、動物の「5つの自由・ニーズ」を確保する必要があります。「動物福祉」では人の為に動物を利用することは認めておりますが、必ず利用される動物の福祉が確保されていなければならず、人の福祉のためと言えども、使われる動物の福祉が優先されます。それを無視すれば、動物の酷使になり、動物虐待に繋がります。

また、今回の改正では、「殺処分0を目指す」ことや「譲渡・返還の推進」「終生飼養」や「緊急災害時の対応」等も盛り込まれましたが、「殺処分0」を絶対ととらえ、そのために、ただ「かわいそう」という感情だけでスペースも人手もお金も十分にない人に譲渡し、気が付いた時には劣悪多頭飼育の二次崩壊という事態もすでに起こっています。殺処分はしていなくても動物は病気でじわじわ死んで行きます。このままでは「殺処分0、でも、動物福祉も0」の国になってしまいます。

「終生飼養」についても、飼ってはいてもその飼養状況はどう見てもネグレクトということはそれほど珍しくありません。「生きている」か「死んでいる」かだけを問題にし、その生きる質については問いません。動物は苦痛を受けながら毎日を送らされているのです。それでも「終生飼養」なのです。「動物福祉」とはその「生きる質」を問うのです。

この現状を改善していくためには、法律を遵守し、官民が力を合わせて「動物福祉」を推進し、人と動物が共に幸せに暮らす社会の構築に努力する必要があると思います。 (第1回・理事通信)