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第3回「私感:差別と自立生活と社会参加、そして、権利とユニバーサルデザイン社会」

当会副理事長 佐鹿 博信 (横浜市立大学医学部 リハビリテーション科 客員教授)

私は1976年にリハビリテーション科医師(2003年にリハ科専門医登録)になりました。約40年間で障がい者への差別、社会参加、権利(人権)をめぐってゆっくりだが大きな変化がありました。

1980年代の初頭は、リハ医学では「医学モデル」が主流であり、日常生活動作の自立や職業的自立を重視する自立観でした。青い芝の会(脳性麻痺者)による鋭い「生存権要求」「障がい者への反差別」などの闘争がありました。1979年の全員就学(養護学校義務化)や1981年の国際障害者年(完全参加と平等)など、障がい児教育や障がい者への社会的施策が大きく進みました。

1960年代の初めにカリフォルニア大学バークレー校から始まった自立生活運動(MIL)は、1972年に自立生活センター(CIL)へと発展し、ILの自立生活モデルは医学モデルを凌駕していきました。自立とは自己決定権の行使(自分の生活を自分で選び自分で決める)であるというMILは、1970年代後半に日本に紹介され、1991年には全国自立生活センター協議会(JIL)が発足しました。2015年では全国125団体がJILに加盟しています。

CILでは、障がい者自身が自らの自立生活のためのサービスを選択し運営(自己決定)する権利を有し、その計画の立案から運営までの過程に専門家と対等に参画する行為を自立として捉えてCILの運営の中核を障がい者が担っています(当事者参加)。自立体験をもつ障がい者は自立生活の実践的専門家であり、自立を求める障がい者の自立生活を側面から支援するピア・カウンセラーです(専門家と対等)。障がい者の自立(社会参加)を妨げるような障壁(差別的な社会構造や環境)を改革するために、他の社会的に阻害された人々(マイノリティー)と連携します。

国連は「障害者の権利に関する条約」を2006年12月に採択し、2007年に日本は署名しました。これを受けた「障害者差別解消法」はようやく2013年5月に成立し、2015年12月に同条約を批准し、2016年4月に同法は施行されます。長年、差別により苦しんできた障がい者はようやく完全参加と平等への法的基盤を獲得したことになります。

さて、補助犬使用者には、補助犬同伴拒否という差別の現状があり、自立生活、社会参加、権利などが十分に満たされているのでしょうか。

まず、同伴拒否の前に、補助犬を希望する障がい者はこれにアクセスする権利を阻害されています。介助犬と聴導犬の訓練事業者と認定法人は、北海道・東北・北陸・中国地方、および東京都と沖縄県には存在していません。盲導犬では全国で11法人に過ぎません。合同訓練は介助犬40日以上。盲導犬10日以上、盲導犬(共同訓練)4週以上を課せられています。例えば、青森県に居住する聴覚障がい者は、聴導犬のために関東や長野県などに出向かなければなりません。これでは「聴導犬をあきらめなさい」と言われていると同等です。多くの障がい者にとって、このようなアクセス権への侵害すら解消されないで障がい者補助犬法施行後14年が経過してしまいました。所轄官庁(厚労省と国家公安委員会)のみならず訓練事業者と補助犬使用者は猛烈に反省しなければなりません。アクセス権の解消へ向けた強力な施策を要求し、訓練事業者と補助犬使用者は連携して運動を進める事が必要です。

「当事者参加」ですが、補助犬の認定審査会や訓練事業者などに補助犬当事者が参加していません。つまり、専門家と対等の実践的専門家(ピア・カウンセラー)としてこれらの機関から認知されていないと言えます。そうすると、訓練事業者を介したピアカウンセリングも有効に機能していない可能性があり、補助犬希望者は「公正」なピアカウンセラーへのアクセスを阻害されていると推察されます。さらに、当事者参加によりはじめて良質な補助犬の育成、公正な認定、および啓発普及が実現していくと思います。加えて、「人に迷惑を及ぼさないこと」などの拒否や社会的障壁に直結する酷い表現も改善されると思います。

訓練事業者と認定施設が同じという極めて「非公正」な状態が解消されていません。医学教育分野では、医学教育の質向上と「公正」な臨床実習資格認定を目的として、2005年から医療系大学間共用試験実施評価機構が客観的臨床能力試験実施されています。補助犬の認定審査では、訓練事業所と認定施設を分離し、認定審査を実施する「認定審査機構」による客観的で公正な認定が行われることを期待します。

最後に、補助犬の所轄官庁は統合されるべきです、盲導犬は道路交通法規定されています。同法の目的は「交通安全に資すること」であり、視覚障がい者の社会参加や権利擁護に関する事柄はこの法の目的ではありません。したがって、盲導犬の所轄官庁は厚労省とするべきです。

このように考えてくると、補助犬に関する差別、社会参加、権利などが曖昧なままであり、このことが補助犬の普及を妨げているのかもしれません。このような現状であっても、補助犬使用にかかわらず、障がい者の社会参加を促し、支援し、受け容れる社会を創造していくことが重要です。つまり、ユニバーサルデザイン社会(UD社会)です。UD社会へ向けた運動の主体者は障がいの当事者であるべきです。補助犬使用の障がい者の連携が進み、補助犬訓練事業者の協同体(協議会)が形成され、補助犬情報センターがそれらの個人・団体・組織への連絡機能を持つことは重要です。 (第3回・理事通信)