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第11回「飼い主としての補助犬使用者」

当会副理事長 山﨑 恵子 (ペット研究会「互」主宰、IAHAIO 理事、白書作成委員 他)

 補助犬の使用者は同時に犬の飼養者であることは言うまでもないが、この点がしばしば見過ごされているのではないかと考えることがある。そのようなことを言うと「補助犬はペットではない」、と叱られてしまいそうであるが、実はペットではないという点が極めて重要なことである。補助犬はペットよりもはるかに重要な任務を背負っているわけであり、当然のことながら一般のペット以上の「メンテナンス」が必要であろう。(ペットを軽視しているわけではないし、彼等にも重要な役割があることは承知している。)最近の愛犬事情を見ると、飼い主たちの知識の幅はめまぐるしいほどに進化している。手作り食やナチュラル・フード、ホメオパシー、アロマ、フラワーレメディ等々を含むホリスティック・ケア、年々進化し続ける様々な犬具、行動学の最新情報に基づいた様々なトレーニング方法、言い始めればきりがないほどに愛犬のケアは今や、一大産業ともなっているのである。そしてその中で飼い主たちには、実にいろいろな選択肢が与えられ始めているのである。しかしそのような情報は、飼い主が求めなければ手に入ることはない。多くの愛犬家はより良いものを求めて常にアンテナを張り巡らせている。

 ここで補助犬の位置づけを考えてみると、どうであろうか?残念ながら、トップを走る一般の飼い主たちと比べれば、まだまだ情報が補助犬の世界では行き渡っていないように感じるのは私だけであろうか。確かに補助犬の育成には必ず障がいのある使用者に関する的確な情報を把握し、それを考慮しながら作業が行われなければならない。一昔前はこの点がないがしろにされ、犬のトレーニングが主軸におかれていたようである。しかし、今や振り子が反対に振り切られているのではなかろうか。大切な作業をしている犬であるからこそ、ペット以上の最新情報に基づいたケアが必要なのである。ドッグスポーツが盛んになってきたことから、今やスポーツドッグ専門の獣医学もあり、後肢などのアンギュレーションの測定等から適性や限界を見ることもできるようである。薬膳による体質改善も動物の世界に広がっている。獣医療の中にも理学療法の専門資格ができ、多くの専門家が育っている。また飼い主が自ら学び、愛犬のボディーバランスの調整に応用できることで世界中に広がりを見せてきた『Tタッチ』も、今や我が国にも定着し、何名もの免許皆伝者が全国に存在する。補助犬には欠かせない服に関しても、素材や構造が犬のストレスを和らげるようなものも開発されており、一般の飼い主たちの中にはこれらを犬に安心をもたらすための「道具」として活用している人々も決して少なくない。

 このようにめまぐるしい発展を遂げている愛犬ケアの世界に関する情報を、もっと補助犬使用者に知っていただく必要がある。むろん使用者の中にはこのような情報に精通している方々もおられることは事実である。しかし一般のペットとは違う、という位置づけを主張するにはペットの飼い主よりも自らのパートナーのメンテナンスに、より一層時間とお金をかけることが当たり前であるということを基本としなければならない。このような点をぜひ今後様々な関係者にお考えいただきたいものである。 (第11回・理事通信)