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第5回「熊本地震によせて・・・動物行動学の観点から」

当会理事 入交 眞巳
日本獣医生命科学大学 獣医学部獣医学科 臨床獣医学部門 治療学分野Ⅰ 講師(米国獣医行動学Ph.D)

 熊本地震があった日から1か月以上がたちました。被害にあわれた方に改めてお見舞い申し上げます。

 地震の後遺症で困っているワンちゃんや猫ちゃんに何ができるか、今からワンちゃんや猫ちゃんに何ができるかのお話です。

<地震の災害警報や携帯の警報を聞くと怖がる子に対して>

レオンベッド 警報が鳴ってから必ず揺れが来るような環境にいると動物も警報が鳴ると揺れが来るのではないか、と学習し、警報音で不安が増すような事態になります。警報音は怖いものではない、と教えるために警報が鳴ったらワンちゃん、ネコちゃんに大好きなおやつやフードをあげるようにしてみてください。おやつの大きさは小指の爪の半分くらいの大きさで十分です。小さいおやつをいくつもあげて気持ちを落ち着かせてあげましょう。
 もしも、普通は食べるのに警報の後はおやつやフードを食べない場合、これは不安が強すぎて食べられない、という意味です。無理に口に入れようとすると人の手がかまれるかもしれませんので、無理強いはせず、リードが付いていたら気分転換に少し一緒に歩いたり、他の部屋に逃げさせてあげたりしてもいいでしょう。少し落ちついたらおやつを上げたらよいと思います。

<特定の場所や状況に対して怖がる場合>

 本震を経験したのが寝室だった猫さんがその寝室に入らなくなって困っているご相談を受けました。特定の場所に対して怖がっている場合、地震の後にその経験から学んでしまった「寝室にいると地震が来て怖い」という考えを「寝室にいても大丈夫」という考え方に変更させるために「拮抗条件づけ」という学習をさせます。
 夜だけ寝室に入って犬や猫を招くのではなく、日中も時間があるときに寝室に行ってあえてそこで大好物の食べ物を与えたり、寝室であえて思いっきり遊んであげましょう。また可能であれば、ご飯もその部屋でしばらくあげても良いかもしれません。
 どうしても上のようなテクニックがうまくいかない場合は、不安を下げるサプリメントやお薬がありますので獣医さんにご相談ください。

<これからしたいこと>

 徐々に落ち着いてきましたら、万が一に備えていきましょう。
 災害時はどうしても色々なことが起きますので、どんなに気を付けていてもワンちゃんや猫ちゃんがはぐれてどこかに行ってしまったり、パニックしていきなり逃げ出したりします。落ちついてからそっと物陰から出てきて近所の方が保護するようなことになるかもしれません。災害時に捕獲された動物が誰の子か速やかにわかるようにワンちゃん猫ちゃんにはマイクロチップを装着し、登録をしておきましょう。また、狂犬病済票を首輪につけておくとこれも所有者明示の意味があるものになりますので、つけておける子はつけておくようにしましょう。また首輪などに消えないマジックなどでご家族の名前と電話番号を入れると、だれでもすぐに誰の子かわかるのでお家に帰りやすくなるかもしれません。災害時に迷子にさせないようにしっかり予防しておきましょう。

くるみキャリー また、避難所ではケージに入れられることが多くなります。ケージに入れないと避難所自体にも入れなかったりしますので、何もないときからは「ハウス」と言うとケージやキャリーに自らいけるような練習をしておきましょう。方法は簡単で、「ハウス」と言っては好物の食べ物をケージかキャリーにほおり込むだけです。大好きなものを食べるために喜んでハウスやキャリーに自ら入れるようになります。繰り返すうちに「ハウス」と言うだけでハウスに入ってワクワクとおやつを待つまでになるでしょう。こうなるとハウスに入ること自体にストレスは感じなくなります。


 そろそろ動物たちも落ち着きを取り戻しながらも色々な他の問題も出てきている可能性があります。体調を崩してしまうのは動物も同じです。
 どんなことでも何か心配なことがありましたら是非近隣の獣医さんにご相談ください。 (第5回・理事通信)

<熊本県獣医師会の被災動物支援専用の電話窓口>
 http://www.pref.kumamoto.jp/kiji_15527.html