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第6回「身体障害者補助犬啓発の課題~特効薬はあるのだろうか・・・?」

当会理事 吉田 文(大阪保健医療大学 作業療法学専攻 教授 (作業療法士))

 2015年度にサービスグラントからのご紹介でSMFGプロボノプロジェクトの協力を得て、補助犬受け入れ実態の把握および阻害要因の調査を行った。今回の結果を2005年に行った調査結果と比較してみると、調査人数はほぼ同じ、各補助犬の実働頭数は微増しているが、残念ながら補助犬の受け入れは進んでいないという結果である(詳細は当会・ウェブサイトからダウンロードできる資料をご参照願いたい)。

表1.身体障害者補助犬の実働頭数           
 ※盲導犬:社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会調べ
 ※介助犬・聴導犬:厚生労働省調べ          
調査年 盲導犬 介助犬 聴導犬
2005年03月末 957頭 28頭 10頭
2010年03月末 1070頭 46頭 19頭
2015年03月末 984頭 76頭 61頭



 身体障害者補助犬法ができて14年。当会も今後の啓発活動をどのように展開していけばよいのか、再検討する必要がある。この現状を打開する特効薬はあるのだろうか?

講義後

講義後

 先日、当会理事の木村に私が勤務する大学での講義をお願いした。テーマは「介助犬と作業療法」である。介助犬使用者である木村は現在の介助犬デイジーで3頭目。介助犬使用者の立場から作業療法士になるための勉強をしている学生に向け、自身の障害について、介助犬との生活の実際と有効性、補助犬受け入れの現状等についての講義を行った。リハビリテーション専門職を目指す学生たちに補助犬の講義をすることは、学生にとってはリハビリテーションツールの一つとしての補助犬を学習し、障害のある方の自立と社会参加を支援する知識・技術の幅を広げるという側面がある。もう一方で、学生たちが将来勤務する医療施設での補助犬の受け入れを促進するための啓発活動として捉えることができる。

 直接補助犬使用者の話を聞き、補助犬を目にすることで解ける誤解はたくさんある。世の中には当然犬が苦手という方がたくさんおられる。学生の中にも苦手である・アレルギーがあるという人が数名いた。難しいのは、苦手な学生への強制にならないようにいかに学習の場を共にするかということである。あくまでも学習してほしいのは客観的な補助犬の知識であり、その知識は障害のある方の権利の保障につながるということを学生が理解することである。主観的な気持ちは学生自身が決めることであり、変化を期待するところではなかった。苦手な場合やアレルギーがある場合、どのように対処したら良いか学生全員に説明し理解することを求めた。結果としては何事もなく講義が終了した。それどころか、苦手だと言っていた学生の一人は「犬の印象が変わった、デイジーなら大丈夫」と言って、犬をなでられるほどになった。

 木村からの介助犬育成にはリハビリテーション専門職の協力が必要なこと、将来の就職先で補助犬の受け入れに積極的に協力してほしいこと、そのためにこの授業を役立ててほしいというメッセージと介助犬デイジーの実際の様子が学生の気持ちに影響を与えたのだろうと考える。この変化は補助犬使用者の利益になるだけでなく、犬をなでられるようになった学生の利益にもつながる。きっとこの学生は今後街で補助犬使用者に出会ったときに不快な感情や活動の制限を感じることなく補助犬使用者と場を共にできるはずである。もともと障害のある方への支援を仕事にしたいと志している学生なので全ての犬が苦手な方に当てはまるとは言えないが、今後の啓発活動のヒントがここにあると感じた(この講義については毎日新聞のウェブサイト「支局長からの手紙」に紹介されている)。

 犬が苦手な方や興味がない方にも情報を届ける工夫をすること、将来の社会を構成する若い世代にも積極的に情報提供すること、できるだけ多くの方に補助犬使用者と補助犬との活動を直接見聞きしてもらうこと、そして犬の問題ではなく障害のある方の社会参加の権利の問題であるという理解を求める活動を地道に、他団体・他領域の方々と協力して活動範囲を広げながら続けていくことが必要であると考える。
 身体障害者補助犬法ができてもう14年と思っていたが、補助犬が当たり前の社会になるにはまだ14年なのかもしれない。当会の存在意義がなくなる日が来るまで粘り強く活動を続けられるように計画していきたい。 (第6回・理事通信)